現地民による、イタリアファッションにおけるシャツの着こなしについての考察

皆様、シャツはお好きですか?洋服好きでもそうでなくても、現代の生活においてシャツというアイテムは欠かせないと思います。ただ、シャツってあまりにも普通すぎてオシャレに着こなすのって難しいと感じる方も多いと思います。実は僕自身も昔はシャツに対して少し苦手意識がありました。タックインするかアウトするか、袖をまくるかまくらないか、ボタンを開けるか開けないか。選択肢がとにかく多くて、なおかつオシャレに着こなせないという問題に悩まされていました。ですが、イタリアに住み始めてからシャツに対する考え方が少し変わり、今はむしろシャツを好んで着るようになりました。今回はそんなシャツというアイテムに関するイタリアでの立ち位置や感覚を紹介していきたいと思います。

イタリアではシャツが人気?

イタリア ナポリのシャツブランド ボリエッロの白のシャツ。無地のブロード記事で、普遍的なデザイン。

イタリアは非常に保守的な国なので、昨今のセットアップにTシャツ合わせなんかが流行っている中でも、ジャケットのインナーにはシャツを着る人が多い印象です。エレガントに見せたいならエレガントな服を着るし、リラックスしたい場合はカジュアルな物を着るといったように、シチュエーションにおける棲み分けが比較的はっきりしている印象があります。パンデミック以降にスーツの需要よりもカジュアルウェアの需要が増えていることには変わりませんが、着こなしそのものも少し違います。そして、着る服そのものは保守的でも、サイズ感や実際の着こなし方は千差万別です。そこが面白さと個性を生みだす1番の秘訣なのかもしれません。

イタリア的なシャツの着こなしとは

とはいってもシャツ一枚語るだけでもいろんな要素がありますよね。どんなシャツを着るのかもそうですが、シャツを着る状況によっても変わってくると思います。そこで、いくつか気になりそうな要素に分けて考えてみたいと思います。

インナー問題

シャツに限った話ではありませんが、イタリアでは着こなしにおいて人間らしさを排除しない傾向にあります。少し言い方が変になりましたが、いわゆる人間が本来持っている物などに対する考え方が違うという事です。例えば、日本では数多の男性が悩まされていそうな白シャツの透け問題ですが、イタリアではみんなそんな事お構いなしにシャツを一枚で着用しています。彼らからすると「人間に本来ついている物だし、何を気にする必要があるのか?」といった様子です。特に夏は明るいリネンシャツ一枚でみんな街を闊歩しているところを見るに、インナーを着るという概念が日本よりもかなり希薄です。イタリアに来た当初はシャツの下にはエアリズムの様な物を着ていたのですが「なんでそんなプラスチックを着ているんだ?暑くないのか?」といった様なことを聞かれる始末です。

ボタンの開ける数

これに関してもインナー同様「なんでそんな細かいことを気にしているのか?」ということにつながってきます。暑ければ開けた方が良いし、寒ければ閉めればいいという根本的な話であり、ほんの数センチ肌が見えるから嫌らしいという感覚もないのです。そして、シャツを一枚で着れる季節というのは大体決まって暑い季節なので、必然とボタンを開ける人が多いという事です。また、遊びに行く時なんかだと、変にかしこまっているよりもワイルドに振る舞っている方がかっこいいという、至極単純な理由もあります。イタリアではむしろ、ネクタイも締めていないのに変にボタンを閉めていたりしたら「変なやつ」だと思われてしまう可能性さえあります。日本ではガバッと開けている方が「変なやつ」に見えそうですが、そのあたりは価値観の違いが如実に現れます。正直なところ、イタリアでは3つ開けくらいまでなら誰も気にしていません。

素材感

素材はもちろん天然素材の場合が多いのですが、比較的ツルッとしたブロードみたいな物を着ている人が多いです。個人的にはしない合わせですが、彼らはデニムなどのカジュアルパンツにもツルツルのシャツを合わせます。これに関しては正直意見が分かれるところだと思います。別に着るも着ないも個人の自由なのですが、せめてピンオックスなんかの方がいいのではないかと思ってしまいます。ただ、そういった場合は腕まくりもすればボタンもしっかり開いていたりと、着こなしはかなり崩れているので、そこでバランスを取っているのでしょうか。

ディテール

YouTubeなどにおけるファッションメディアの台頭で、日本の市場でも比較的見かけなくなってきていると思いますが、それでもたまに見かけるびっくりドッキリシャツの様な物はイタリアでは着られていません。ここでいうびっくりドッキリシャツというのは、例えば襟が謎に二重になっている物や、ボタンホールの色が違う物、もしくは白地の布に黒のボタンが付いていたりする物です。

オーソドックスに、無地で特徴のないシャツが一番よく切られています。また、一時期クラシコイタリアブームで極端なカッタウェイが売られていましたが、そういった物も最早あまり見かけません。もちろん、イギリス物の様なレギュラーカラーほどという訳でも残念ながらないですが、イタリアではセミワイドカラーあたりが好まれています。

なぜイタリアではTシャツよりもシャツなのか

イタリアでも日本と変わらず、Tシャツその物はみんな持っていますし、たくさん着られています。ただ、Tシャツを着ている人の多くはショーツを履いていたり、デニムやいわゆるジョガーパンツの様な物などを履いていたりと、オシャレよりもとにかく快適さを求めて、カジュアルに振り切っている印象です。全体的にTシャツを使ってる大人っぽいファッションをしようとする雰囲気はなく、あくまで街着としての立ち位置となっています。その為、なんでもない日に普通の街を歩いていると、夏場は日本に比べてより軽装の人が多い印象です。むしろ日本の蒸し暑い環境でロングパンツをみんな履いている方が不思議なのかもしれません。

ただ、近年では半袖のシャツなんかもかなり増えてるそうですが、それでも日本と比べると長袖のシャツを着る人が多いです。これは、夜はかなり冷え込んだりする事もあったりと、気候的な問題もあると思います。そのため、長袖のシャツにショーツという組み合わせを自然とよく見かけます。ただ、ファッション雑誌の様に、スリッポンやエスパドリーユ、グルカサンダルなどを合わせている人は滅多にいません(ちなみに、この組み合わせで一番よく見かけるのはビルケンシュトックです)。

気候の問題もありますが、シャツはエレガントであると同時に、Tシャツよりもいろんな側面において自由度の高さがある事も一つの要因だと考えられます。Tシャツは着てしまえばもうあとは脱ぐしかありませんが、シャツはボタンひとつ調節するだけでも印象が変わったりと、着こなしのバリエーションがもう少し豊かですよね。そこがある意味個性が発揮される部分でもあり、だからこそオシャレをするとなったらシャツを着る方が多いのかもしれません。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は割と軽めの記事でしたが、お楽しみ頂けましたら幸いです。また、シャツに関する記事として、大手メゾンのプラダと、ナポリのシャツブランドであるボリエッロのシャツを比べたりもしていますので、もしよろしければ暇つぶしにお読み頂けますと幸いです。

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