相変わらず暑いですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。イタリアでは古い建築が多く、エアコンがついていないアパートメントが沢山あります。斯くいう僕の住処も例によって夏は灼熱の地獄と化しています。こんなに暑い中でジャケットの話なんて考えただけで汗が出そうですが、クラシックスタイル愛好家の端くれとして今日も張り切っていきたいと思います。
人間の悲しい性
ところで、ジャンルはともあれ洋服のブランドの話になるとついつい格付けしたくなるのは人間の性なのでしょうか。もちろん常日頃からファッションに勝ち負けなんてなくて、自分の価値観を軸に好きな洋服を着れば良いというのは言われずともわかっているつもりです。
しかし、ふとネットの誰かが勝手にランキング付けした表なんかが目に入ってしまい、自分のお気に入りのブランドが他のブランドより下に置かれているのをみてしまうと、なんだか悔しい気持ちになるのは否めないと思います。
勿論場合によってはクオリティに明らかな差がある場合も否めないと思います。某ウルトラファストファッションのジャケットと有名ファクトリーのジャケットなんかを比べたらクオリティは格段に違いますよね。手間暇をかけるという事はどんな仕事においても欠かせないポイントだと思います。
しかし、それはあくまで圧倒的な工程の差がある場合の話で、たとえばキートンとアットリーニがどのくらい違うかと聞かれると素人の私個人的にはさっぱりわかりませんし、最早好みの問題となってしまう事が多いのではないでしょうか。
こういった様に、クオリティという点を中心に様々な角度から拮抗していると語られるブランドは多々あると思います。そして、多くの方がそうだと思うのですが、買い物をする際は「二つの商品を比べて最終的に一つをとる」というプロセスを挟む事が多いんじゃないかと思います。
イザイアとベルベスト
僕が今回注目するのはタイトルにもある通りイザイア”ISAIA”とベルベスト”Belvest”についてです。様々なメディアで何かと並べられがちな二つのブランド。価格帯や立ち位置なんかも似ていて、かつ南と北というわかりやすい違いもあるので取り上げられやすいのでしょうか。
ただ、実際着てみて何が違うん?ってところは曖昧になってしまう部分があると思います。所謂「それぞれに個性があるので、お好みですね。」というありきたりなコメントに行き着いてしまうんですね。そこで、今回はあくまでド素人の意見として、個人的に感じた違いなどを備忘録的にまとめてみたいと思います。
それぞれのブランドについては私が語るのも烏滸がましいですが、イザイアはナポリ、ベルベストはパドヴァとそれぞれ南イタリアと北イタリアに拠点を構える言わずとも知れたサルトリア系ブランドです。
今回比較していくのはそれぞれ”軽いジャケット”として有名なモデルになります。もう少し構築的なモデルで比べてみようかとも考えたのですが、一般的に使いやすいのはやはり仕立ての軽いジャケットだと思います。
ISAIA “SAILOR”

まずイザイアからは軽ジャケの代表的モデルのセイラーです。
Belvest “JACKET IN THE BOX”

対してベルベストからもアイコニックなモデルのジャケットインザボックスです。サイズはどちらも48になります。
実は比較にあたって致命的な点があります…というのもイザイアはコットン50%リネン50%の混紡生地に対して、ベルベストは梳毛のカシミヤ97%にシルク3%の混紡という非常に大きな違いがあるというところです。そこは…まぁ…ノリで乗り切りたいと思います()
コンストラクションのお話
基本的にはどちらも副資材は少なく、非常に軽く作られています。ただセイラーの方は芯地がより使われているので、よりジャケットを着ているという感じがします。


一方ジャケットインザボックスはより極限まで軽さを求めている印象です。中身も最低限しかなく、羽のように軽く作られています。


袖付に関してはイザイアはナポリのブランドらしくマニカカミーチャになっているのに対して、ベルベストは特にギャザーがあるわけでもなく非常にクリーンに作られています。ただ、これが腕の動かしやすさにすごく影響しているかというと、個人的には差は感じません。
着心地の比較
ジャケットインザボックスの方が軽いならそっちの方が良いか?というと、そう単純な話でもない気がします。先程述べた様に「お好み」という結論に辿り着いてしまいそうですが、もう少しだけ具体的に違うと感じる点を書き出していきたいと思います。
まず、セイラーの方が着ている時に身体に纏わりつく感触というのが強いです。素材の違いがあまりにも大きいので一概に言い切れない部分ではあるのですが、やはりコンストラクションの影響が大きいと思います。それでいて窮屈さは全くないのが良い点だと思います。柔らかい仕立てでありながらどこか逞しさを感じられます。
一方のジャケットインザボックスは完全にカーディガンの様な軽さです。こちらは纏わりついてくるというよりは、そっと身体に寄り添ってくるといった印象が強いです。もちろん素材の影響も大きいですが、たとえば歩いている時などとにかく柔らかいドレープが綺麗に出ます。それでいてしっかりとジャケット面をしているのが大きな特徴です。
着こなしのイメージ
基本的にどちらのジャケットも素晴らしい完成度です。ただ、スタイリングによってより向いているか向いていないかという違いは生まれるのではないかと思っています。個人的に、タイドアップも含めて汎用的に楽しみたい場合はセイラーを、よりエレガントなカジュアルスタイルに特化したい場合はジャケットインザボックスを選ぶと思います。
というのも芯地がよりしっかりしていることによって、ネクタイをした時により全体を通してしっかりと見えやすいのはセイラーだと思うからです。汎用性の高さで言うならこちらの方が使いやすいと思います。
一方でジャケットインザボックスはその特別な軽さから、よりカジュアルに合わせても独特のエレガントさが生まれるという強みがあると思います。もちろんタイドアップで合わせることもありますが、個人的にはもう少し崩したスタイリングで着る方がしっくりきます。この違いこそが個人的な好みの出る一番大きなポイントだと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。どちらも長く愛用できる素晴らしいジャケットだと思います。もちろん個人的には死ぬまで着れたらいいなぁと思ってます。
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