古今東西色んな靴ブランドが存在しますが、国によってその靴作りに対する傾向も違いますし、工房によっても様々です。個人的に前回紹介したEnzo Bonaféのシューズはイタリア靴としては比較的中庸なシルエットを持っていると感じていますが、今回はよりイタリアらしい艶っぽいフォルムをもつ、名シューメイカー”Sutor Mantellassi”によるシングルモンクストラップシューズを紹介します。
Sutor Mantellassi Single Buckle Monk Strap Shoes

Sutor Mantellassiは1912年にイタリア、フィレンツェで創業した靴メーカーです。「名靴職人」という意味合いを持つSutorという言葉を創業者一家の苗字と合わせたブランド名で、約100年にわたって職人技を駆使した靴作りが評価されていました。2000年代に買収されリプランディングを果たしましたが、残念ながら現在はブランドとしては休止してしまっています。

今回紹介するこちらの靴はリプランディング後に販売されたモデルになります。Goodyear Fatto a manoと書かれており、ハンドソーンウェルテッドで作られている個体になります。そのおかげで堅牢さを保ちつつも非常に柔らかい履き心地となっております。アッパーに使われている革もムラ感のある綺麗な色合いを持っており、非常にしなやかで繊細です。素材使いから仕立てに至るまで、靴としての完成度が非常に高い事がわかります。
日本では1990年代にクラシコイタリアブームがあり、このSutor Mantellassiを始めイタリアの靴ブランドが注目されていた時代がありました。その当時はスクエアトゥの靴が主に作られていましたが、この個体は非常にグラマラスなシルエットになっています。こういった細身の靴は、一歩間違えるといやらしくなってしまう危険性がありますが、絶妙なラストが使われており、クオリティの高さがそれを色気として反映させており、非常に艶っぽい靴となっています。クラシックの本流である英国靴が持つ中庸なフォルムとは少し異なりますが、それがワードローブに新鮮さをもたらしてくれます。

公式Instagramの投稿も2020年を最後に途絶えており、残念ながら現在新品で購入する事はできません。ですが、僕の所有する個体のようにミントコンディションの物もまだまだ中古市場には眠っています。現在も生産を続けており、尚且つ人気があるブランドというわけではないので、価格も非常にお手頃な物が見つけられると思います。Sutor Mantellassiもそうですが、今人気がなかったりみんなが履いていないからといって、アイテムその物の品質が低いという事は絶対にありません。むしろ、そういった過去のアーカイブにもしっかりとアンテナを貼っておく事が大切だと、イタリアでの生活を通して深く感じています。今後さらに履き込んでいって、どのような変化が訪れるかが楽しみな一足です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。1人でも多く、こういった隠れた名品に興味を持ってくださる方がいらっしゃいますと幸いです。当ブログでは今後も新旧問わず、僕が個人的に思う色々な名靴を紹介していきますので、お楽しみいただけますと幸いです。

