王道にして原点 ブリオーニが体現するクラシックの美学とは

今でこそ、イタリアには数多の既製服ブランドやファクトリーがありますが、大昔は既製服というのは所謂庶民向けの物で、それぞれの個人に合わせて仕立てる注文服こそが王道でした。そんな洋服業界に革命を齎したのが1945年に創業したBrioni(ブリオーニ)というブランドです。

ですが、僕の体感では日本のファッションメディアではあまり取り上げられておらず、些か人気がない印象があります。実際僕自身、イタリアに来る以前から洋服好きであったものの、ブリオーニというブランドについて余り聞く機会もなく、特段意識する事がありませんでした。ですが、イタリアに渡って色々な服を購入したり着たりしてきた中で、既製服を語る上では絶対に外せない、ましてやクラシックスタイルが好きな方は一度は袖を通すべき洋服だと確信しています。

そこで、今回はあくまで素人の目線から「ブリオーニの洋服とは何なのか?」という事を徹底的に掘り下げていきたいと思います。

ブリオーニの美学と仕立て

ブリオーニ テーラードジャケット

まずは簡単にブランドについて説明をしておきます。ブリオーニは1945年にローマにて高級注文服や注文靴などを取り扱う店舗として創業しました。その優れた仕立ては世界中で活躍する紳士達を瞬く間に虜にしてしまい、その名が知れ渡るのに時間はかかりませんでした。そして、ブリオーニが行った最も確信的なイベントが、1952年にフィレンツェの、ピッティ宮殿で行ったファッションショーです。メンズファッションにおける初めてのランウェイであり、今現在のファッションショーの原点をブリオーニが生み出しました。また、手仕事のクオリティを保ちつつ増産する為の分業制による生産も画期的なアイデアであり、今では多くの高級既製服ブランドがこの手法を取り入れています。

ブリオーニのロゴ

イタリア古着ディグ日記 #6 Brioni(ブリオーニ) ダブルブレステッド テーラードジャケット

僕がブリオーニについて最も好きな部分は、やはりなんといってもそのフォルムの美しさにあります。既製服という特性上色んな人にバランスよくフィットする必要がありますが、ブリオーニのシルエットは着る人をより逞しく、美しく見せてくれます。ただ直線的に洋服を作っているだけでは不可能な域だと思います。それでいて非常に着心地が軽く、体が動かしやすいのはいうまでもありません。例えば僕はピアノを弾きますが、仕立てが良いと一般的に言われるようなイタリアブランドのジャケットでも、演奏の際にはたまにストレスを感じる事があります。それらのジャケットの着心地が悪いという訳ではなく、むしろ良い方だと思いますが、実際に演奏するとなるとかなり腕も体も動かしますので、どうしても突っ張りを感じてしまう時があります。ですが、ブリオーニのジャケットを着ている時は、ピアノを弾いて上半身を自由自在に動かしていても「脱ぎたい」と感じる事がありません。見た目に反して極めて柔軟に出来ていると実感します。こういった細やかな感触はやはり手縫いによる影響が多いと思います。勿論、職人が最初から最後まで一人っきりで作り上げるような仕立て屋が存在することも確かです。ですが今日、ブリオーニと同程度に手縫いを施して洋服を作るブランドがどれだけあるでしょうか。

ブリオーニのジャケットの胸ポケット
胸ポケットはバルカポケットなどのわかりやすいディテールは使わずに、ただシンプルで美しいハンドステッチのみが施されている。

王道のスタイル

ブリオーニの洋服は非常に中庸的なデザインを持っていると思います。一部で持て囃されるような、一見してわかりやすいような手仕事感のあるディテールはありません。もしかしたら人によってはそれが退屈に感じる事もあるかと思います。ですが、個人的には中庸であるからこそ色んなコーディネートに用いるができると思いますし、普遍的であるが故いつの時代にもクラシックであり続けられるのだと思います。多くの方がクラシックという言葉を聞くと「古典的」悪い言い方をすれば「古臭い」という印象を持つかも知れませんが、本来は「最上級のクラス」という意味を持っている言葉なのです。その域にたどり着く為にはどんな要素にも汚されない、普遍的な美しさを兼ね備えている必要ががあります。一時的なものでは無く、王道的に美しいのがブリオーニの洋服だと思います。

ブリオーニが放つ独特な格調高さ

ブリオーニのコートに使われているカシミヤ
ブリオーニが使用する極上のカシミヤ

裏地なし vs 裏地付き|ブリオーニのカシミヤコートで比較する仕立てや着心地の差

先程から述べているように、ブリオーニの洋服にはわかりやすくラグジュアリーな要素というのはあまりありません。柔らかい小洒落た雰囲気と言うのもナポリのブランドに比べると感じられないでしょう。ですがブリオーニの洋服は、ただそこにあるだけでなぜか独特のオーラを放っています。この絶妙な格調高さは他のブランドではあまり例を見ない非常にユニークな特徴だと言えます。それは何よりも静かな贅沢だと言えるのではないでしょうか。着用するだけで周囲からなんと無く一目置かれる。でもそれが何故なのかを本当に理解できるのは着用者本人だけです。つまり、ブリオーニの洋服は着用者自身が持つオーラをより高めてくれると言うことができます。本来装いと言うのは洋服主体で無くあくまで着用者の人間としてのあり方が主体になるべきであり、それこそが本当のエレガンスを生み出します。勿論これは自戒でもあり、日頃から洋服選びにおいて大切にしているつもりですが、ブリオーニを着用すると、その事を改めて思い起こさせてくれます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。やはりブリオーニは特別であり、個人的には他のイタリアブランドよりも袖を通してみることに意味があると感じています。勿論古着でも状態の良いものは沢山眠っていますので、もしまだ経験がない場合は是非一度試していただくことをお勧めいたします。

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