街の隠れた”サルトリア” #2 Di Marco Luigi チェスターフィールドコート

こんにちは。前回からすこし時間が空いてしまった”街の隠れたサルトリア”の第二回となります。何も見つからなかったというわけでは勿論ないのですが。いかんせんサイズの問題が大きく、なかなか許容範囲の物を手に入れることが難しいです。そんな中、第十四回第十五回の古着ディグ日記で紹介したコートを見つけた雑多な古物屋を訪れた際に、運良く新たな出会いが訪れました。それが今回紹介するDi Marco Luigiのチェスターフィールドコートです。

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Di Marco Luigi Chesterfield Coat

Di Marco Luigiといきなり言われても「誰?」となるのではないでしょうか?こちらのサルトリアはボローニャに存在していた様です。ボローニャは以前街としてもご紹介いたしましたが、イタリアの北部”エミリア ロマーニャ州”の州都であり、世界最古の大学と称されるボローニャ大学が創設されるなど、現在でも学術都市として北イタリアを代表する都市の一つとなっています。

最古の学術都市 ボローニャ

さて、こちらのサルトリアに関してですが、残念ながら調べてみても何の情報も得られませんでした。というのもこのコート、非常に古いです。日付を見ていただくとわかる通り、7 12 56と書かれていますよね。おそらくですが、1956年の12月7日に受け渡しということだったのではないかと推測しています。およそ70年も前に作られたコートがほぼ未使用と言ってもいい様な状態で見つかることがあるんでしょうか。

ディテールに関しては、基本的にはダブルブレストのチェスターコートでありつつも、袖がターンナップになっているという、少し変則的な仕様です。また、腰ポケットはスラントポケットになっているのも特徴です。全体的にとても丁寧に仕立てられています。

ボタンホールに関して興味深いのが、左右どちらも2つ穴が空いているということでしょうか。風の向きによって留める側を変えられるという実用性が考えられた仕様といえると思います。

また裏地のパイピングなども、素人目にはとても綺麗に見えますが果たしてどうでしょうか。

さて、このコートですが実はかなり重たいです。測ってみたところ約2.8キロあります。ただ、着るとそこまで重さを感じないところがよく出来ている証だと言えます。何というかこう、首にグッと巻きついてきて、肩にかけてバランスよく乗っている感覚がします。また、当然ハンドメイドで作られていることが随所から見て取れるのですが「この生地を縫うの大変そうだなぁ」という、小学生の様な感想が思わず浮かび上がりました。

サイズに関してですが、正直他のコートと比べると若干大きいです。例えば僕はジャケットを選ぶ際は肩幅が44.5のものが基準で、そこから少し前後するといったところになります。なのでコートはほんの少し大きめになるのが理想的な所、このコートの肩幅は48センチもあります。ただ、やたらめったら大きいというわけでもなく、たとえばツイードやフランネルなどの冬用のジャケットなんかを着てこのコートを着ると、個人的な感覚としては案外収まりが良かったりします。もしかすれば、生地がやたら分厚いことによる影響もあるのかもしれません。また、身幅は割と絞られており、ボタンを留めて腕を下ろすとしっかりウエストはシェイプしています。なので、大きいけどブカブカというわけでもない。不思議なフィッティングです。

僕はあくまで素人なので、仕立てにどんなテクニックが使われているのかは判断出来ません。ですが、少なくとも洋服好きの端くれとして、このコートからは職人の洋服に対する情熱がしっかりと伝わってきます。もしかしたら彼の哲学を受け継いだサルトリアがどこかにあるのかもしれませんが、今僕の手元には作品として残されたこのコート一着のみです。世界各国どこでもそうですが、こう言った職人技が失われつつあるのは非常に残念なことです。僕たちは今一度地に足をつけて、クオリティとは何かということに関して考えなおさないといけないのかもしれませんね。

さて、そんな魅力的なコートですが、20€(当時のレートで約3400円)で購入しました。ピアチェンツァには全く興味を示さなかったスタッフも「このコートはサルトが作ったんだ!美しいだろう!」なんて支払いの際に言ってましたが、実際ラックにかかっている時から唯ならぬ雰囲気を放っていたのは事実です。こういった出会いこそがイタリアで古着を見る醍醐味ではないでしょうか。皆様もイタリア旅行の際には是非古着屋に立ち寄ってみてください。もし「どこに行けばわからない」という方がいらっしゃいましたらイタリア古着ディグガイドなんかも書いてますので、そちらもぜひお読みいただけますと幸いです。

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