「クラシックスタイルって、結局何なんですか?」
洋服のスタイルには様々あるかも知れませんが、クラシックスタイルというのはそもそも一体何なんでしょうか?スーツやネクタイといったフォーマルな洋服の事なのか、あるいはヨーロッパ的着こなしの事なのか、言葉のみが一人歩きしていて、本質的には何なのかという事があまり語られていない様に感じます。
一般的には、クラシックスタイルと聞くと
「地味」「古い」「堅い」
そんなイメージを持たれることが多いと思います。確かにクラシックスタイルはトレンドに大きく左右される物でもなければ、わかりやすく派手なわけでもないので一見そう感じるのも無理はないかも知れません。
ですが、クラシックスタイルというのはいつも決まった一定の型があるわけでもなければ、ただ古い時代遅れな着こなしという訳でもありません。
今回はクラシックスタイルとは何かという大きなについて、筆者である干梅太郎としての定義と思想についてお話ししていきたいと思います。
「服の種類」は”クラシックであるか”とは関係ない
まずはっきりさせておかなければいけないのは、クラシックスタイル=スーツスタイルではないという事です。
勿論しっかりと着こなしのポイントを押さえたスーツスタイルは”クラシックスタイルの一つの在り方”として考えることができます。しかし、スーツというのは服の種類の一つであり、スタイルを構成するのは別の要素になります。

例えばジーンズだってクラシックになりえますし、ミリタリーアイテム、ニットウェア、ワークウェア、全てのジャンルにクラシックとして捉えられるアイテムが存在します。

もちろんクラシックなアイテムとして考えられます。
では何をもってクラシックな洋服と捉えられるのか?ということが議論になるかと思いますが、答えは案外シンプルだと思います。
それは「文化的、歴史的なルーツを持っていること」という一点に尽きます。
「素材」「仕様」「デザイン」
そこには、服がその形になった理由が必ずあります。それは、アイデアが空から降ってきたのではなく、人間が生み出してきたからです。
クラシックなアイテムは「文化と歴史」に結びついている
クラシックな服を見ていると、どこかしら音楽に近いものを感じます。楽譜がただの紙切れではなく、時代や地域、思想を背負って書き記されて、その背景に対するリスペクトと共に演奏されてきたように、クラシックなアイテムもまた、文化の文脈なしには成立しません。
長時間の仕事の際でも動きやすく、それでいて失礼がないようにスーツが生まれたり、寒さから身を守りつつ格式を守るために様々なテーラードコートが生まれ、革靴は舗装されていない道を歩くための実用品でした。カジュアルとされる領域においても、厳しい海で働く漁師のためにフィッシャーマンセーターが編まれ、過酷な戦場で戦う兵士の作戦に必要な携行品を持ち運ぶために最適化されたミリタリーウェアが開発され、様々なスポーツの際に運動を助けるためにスニーカーの原型が作られました。
それらが今も美しく見えるのは、そう言った文化、歴史の背景で実際に使われ続けてきた時間の厚みが生み出した「最適化された無駄のないデザイン」による影響が大きいと思います。それは、目立つため、自分を語るためなどにそう言った意匠を施したのではなく、その用途おいて最も無理がない形がそれだったということの結果であり、世の常として無駄がなく洗練されたものは、その佇まいが美しく写ります。
では、クラシックスタイルとは?
さて、いよいよクラシックスタイルとは何かという本題に切り込みます。とはいっても、実はかなりシンプルで、ここまで読んでくださった方ならば予想がついているかも知れません。
私が定義するクラシックスタイルとは「クラシックな洋服を美意識に則って掛け合わせたスタイル」になります。
ここでいう美意識とは何かというと、それぞれの服が持つコンテクストを読み取る知識と、それらを踏まえて色合い、素材、ディテールなどという視覚的要素と共に組み合わせて、現代を生きる人間の着こなしとして意味を持たせる意識です。
一言で言ってしまうと簡単に聞こえますが、洗練された着こなしを常に実践するのはなかなか難しいです。クラシックなアイテムそのものが膨大な時を経て生み出された形であるが故に、それを自身のスタイルへと昇華させるにはそれ相応の試行錯誤からなる経験が必要になるからです。
こう書いてしまうとやたらと取っ付きにくさを感じるかも知れませんが、本当にいい物を生み出そうと思ったら、ファッションに限らず何事においても時間がかかる物です。そうやって時間と労力をかけるからこそ過去の自分との違いを楽しめたり、人生において新たなステージに立つ時に、それまで持っていたアイテムがまた違った角度で見えてきたりします。クラシックスタイルを楽しむという事は、人生における装いの移ろいを楽しむことに繋がります。
デザイナーズアイテムはクラシックスタイルに合わせられるか?
これもよくある話なのですが、結論から言うと勿論合わせられます。
例えば先ほどの写真のスーツスタイルに用いているネクタイはDolce & Gabbanaの物です。同ブランドでは他には春夏向けのカジュアルなワークシャツなども持っておりますが、それをLevi’sと合わせて、足元にローファーを合わせるなんていうスタイリングをしたりします。

デザイナーズアイテムと言っても、デザインの99%は無から生まれるのではなく、何か原型となる型があり、そこから時代の空気感やデザイナー本人の思想によって産み直された物が殆どです。あるいはアート的な要素が含まれたプリントTシャツと言った物でも、そこには色が必ず使われており、Tシャツそのものの素材も含めて拾う事ができる要素として存在しています。
デザイナーズアイテムであっても必ずコンテクストが存在しているので、そこはクラシックなアイテムとあまり変わりません。ただ、ブランドというわかりやすい名前に惑わされるのではなく、アイテムその物を正しく判断する必要があるのは事実です。
クラシックスタイルを築くには?
実際にクラシックスタイルに興味を持った時にネットで調べてみると、KitonやBelvestといったやたらと高額なスーツや、John LobbやJ.M.Westonといったこれまた高額な革靴、あるいは60年代のLevi’s 501などのヴィンテージ品など、とにかく初期投資が大変なように感じる方も多いと思います。
大前提として、良い物はそれ相応に高いというのは世の常ですが、近年ファッションアイテムは値上がりを繰り返しており、簡単に手が出せない域に達していると思います。もちろんそう言った品を清水から飛び降りる思いで買う事も時にはあるかも知れませんが、そもそもスタイルを築くのに、知名度の高いブランドの名前を借りる必要はありません。
世の中にはこれまでに誰かが着用して手放した、いわゆる古着という物が沢山溢れていますが、着古されてボロボロになっているだけの物もあれば、キチンと手入れしながら愛用されていた物が手放されたりといった事もあります。そういった良質な古着の中には、今では出来る人がいなかったり、コストがかかりすぎて採用されない超絶技巧が施された物や、手に入らない素材が使われた物などがたくさんあります。勿論新旧含めブランドの名前はそれらを探す指標になると思いますが、本当に必要なのはそう言った「本質的な価値を見分ける審美眼」です。
審美眼を育てるにはやはり知識と経験を積むしかありません。一番シンプルな方法は、良いとされている物が何かをまず調べて、どこでも良いので見つけたらとりあえず触ってみて、じっくり観察してみる事に尽きます。そして、少しずつ自分の中での物差しを育てていくのが大切です。初めはよくわからなかったり、間違える事もあったりするかも知れませんが、物事は最初から上手くいく物ではありません。それを恥じるのではなく、むしろ一つまた勉強したと肯定的に捉えるマインドも大切です。
そうやって少しずつ時間をかけて育て上げた本物の審美眼こそが、何よりの資産になりますし、それはなにもファッションに限らず、様々な分野に応用する事ができるようになります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。僕もまだまだ勉強中の若輩者ではありますが、少しでも参考になった点があれば幸いです。当ブログではほかにもヴィンテージアイテムについてやスタイリングの考察など、ファッションに関する記事もたくさん書いていますので、もしよろしければお読み頂けますと幸いです。

