クラシック音楽の演奏家必見!男性向け 舞台衣装 完全ガイド

当ウェブサイトの管理人(?)は一応クラシック音楽を本業としているのですが、洋服が趣味ということもあり物心ついた頃から現在に至るまで、クラシックの演奏家達の「舞台衣装」についての指標の様な物をずっと作ってみたいと考えていました。というのも側から見ていると「なんでそうなるんや?」と思わず突っ込みたくなるような、チグハグなスタイリングを非常にたくさん見かけるのです。もちろん、いろんな都合やお気持ちが複雑に絡み合った結果なのだとは想像ができますし、極論着る物なんて自由なのですが、正直、個人的なお気持ちとして「シンプルにダサい…」と思ってしまいます。せっかくかっこいい演奏をするんだから、舞台でのコーディネートもすこし工夫をしてみませんか?ということで、今回はクラシックコンサートにおけるステージ衣装のいろはを徹底解説していきたいと思います。ちなみに、演奏者としてではなく普通にコンサートにオシャレしていきたいよ!という方に向けて “クラシックコンサート”のメンズファッション完全ガイドも書いておりますので、合わせて読んでいただけると幸いです。

ステージ衣装としてのスーツ

まず、男性の舞台衣装の基本といえばやはりスーツになるかと思います。フォーマルさとエレガンスを一番簡単に演出することが出来る、まさに魔法の服と言えます。ただ、99%の方が勘違いしているのが「舞台で着る時は、ビジネススーツっぽくならない様に気をつける」という、一見正しい様にも見える嘘です。

ネイビースーツのスタイリング
ビジネスでもコンサートでも幅広く活躍する。
ネイビースーツのスタイリング例

ここではっきりさせておきたいのですが、スーツをビシッと着こなしたい場合、いっそビジネススーツっぽいコーディネートをしてしまう方が結果的にエレガントにみえて、かっこいい場合がほとんどです。元々、スーツのエレガンスというのは控えめさによって演出される物なので、ステージだからといって派手な色をガンガン使ってピカピカにしようとすると、滑稽に見えるだけです。例えば、変に柄の入ったネクタイを選ぼうとするよりも、潔くスーツと同色の無地のネクタイをする方が簡単です。たとえば、ダークネイビーやチャコールグレーなどの、暗い色の無地のスーツであれば、どんなシーンでも万能性に着回せます。なので、当然ステージ衣装としてもぴったりなのです。

ただ、ここで問題なのが「ブラックスーツ」はどうなのか?ということです。例えばプロとして演奏されている方などもそうですが、多くの方がブラックスーツを着て舞台に立っています。はたまた、興行主側の勝手な都合で、黒を着る事を矯正される場面というのもあったりするのではないでしょうか?

クラシックな洋服のルールから考えると、ブラックスーツというのはあまり推奨されているものではありません。そもそも黒という色は本来特別な色であり、燕尾服やタキシードにのみ許されているのです。とはいえ、現代の装いにおいては黒は頻繁に取り入れられる色ですし、厳格に黒を全く着ないという方も少ないと思います。その為、ブラックスーツはNGとは言いません。ただ、一見誰でもオシャレに着ることが容易か思いきや、エレガントでありつつもカッコよく見せるというのは、実はかなり難しいと思っています。

なぜなら、ダークネイビーやチャコールグレーのスーツでは可能な、スーツと同色の無地ネクタイという選択肢ですが、ブラックスーツだと少し話が変わってきます。日本では黒の無地のネクタイというのは基本的にお葬式の色ですよね。つまり、ブラックスーツに白のシャツを着て、そこに黒のネクタイを締めてしまうとあまり印象が良くないのです。もちろん、世界基準ではブラックタイ=お葬式というほど完全にパターン化しているわけでもないのですが、ブラックスーツを選ぶ場合、ネクタイの工夫をした方が良い場合もあります。

ブラックスーツに合うネクタイ

なんだかブラックスーツの話ばかりをしていると、服の本職の方々から怒られそうな気がしないでもないですが、頑張って続けて参ります。

個人的には、何かの都合で強制されない限り、ブラックスーツというのはあまりステージでも着ません。実際イタリアでは着ることがないので、日本の実家に置いてあります。ですが、それでも過去を合わせればもちろん着用する事もありましたし、それに伴い自分の中でのネクタイの候補もいくつかあります。

ブラックベースのネクタイ

ブラックベースのヴェルサーチのネクタイ。
ブラックスーツによく合う。

まず、一番最初に提案するのは「黒色ベースのプリントもしくはドットのネクタイ」というものです。これであれば、黒無地ほどお葬式感が出ることもありませんし、それでいてブラックスーツとの相性も抜群です。ちなみに、写真のものはプリントタイになるのですが、見て分かる通り非常に派手な部類になるので、もっとシンプルなものから揃える事をお勧めします。

グレーベースのネクタイ

モノトーンカラーであるグレーベースのネクタイは、もちろんブラックに合わせても違和感がそこまで出ません。気をつけなければいけないのは、シルバーのように輝かしすぎるものを選ばない事です。選ぶ際には少し鈍い光沢のものを探すことをお勧めします。

グリーンベースのネクタイ

グリーンベースのドルチェ&ガッバーナのネクタイ。
ブラックスーツに色を合わせるとするならおすすめ。

個人的に選ぶことはあまりありませんが、もしあえて色を選ぶとするならグリーンは良い選択肢だと思います。目に優しい色であり、ブラックともそこまで喧嘩をしません。あまりお勧めしないのが、赤色などの極端な原色や、逆にネイビーといった黒に近すぎるトーンのものです。他の色を選ぶにしても、とにかく中庸な色を選ぶのをお勧めします。

ステージでスーツに合わせるシャツは?

白無地のシャツ。
ホワイトシャツ。最強のシャツ。

さて、スーツとネクタイの話をしてきましたが、忘れてはいけないのがシャツですよね。シャツはもう単純明快で、スーツと合わせる時は基本白無地のブロード素材の物一択です。襟型はレギュラーもしくはセミワイドあたりが好ましいです。ボタンダウンはあまりエレガントには見えないので、避けた方がお勧めです。色付きボタンがついている物ではなく、柄もなく全て白の真っ白白で、表面がツルッとしたシャツを選んでください。スーツに合わせてネクタイを締めるなら、それが一番かっこいいです。

でも、みんな黒シャツ着てるじゃん

特にプロもしくは音大生の方でこの記事を読んでいる場合、こう思った方も多いのではないでしょうか。クラシックの演奏会では黒シャツもステージ衣装として酷使されていますよね。個人的には黒シャツに逃げるのは甘えだと思っており、自分では極力選ばない様にしているのですが、それでも今日の演奏家達を取り巻く環境を考えるとNGとはいえません。ただ、それでも着こなしに関して、可能であれば注意してほしい点があります。

ネクタイを締めない

ブラックスーツに黒のシャツを着て派手な色のネクタイを締めるというコーデは極力避ける方が好ましいです。「バカヤロー」と、アウトレイジばりの怒号がどこからか聞こえてきそうです。もし僕が黒シャツを着て、尚且つネクタイを締めなければならないという状況に迫られた場合は、潔く黒の無地のネクタイを締めます。そういった状況の場合は、いっそ全身真っ黒にしてしまった方が清々しいというのが個人的な感想です。

ネイビースーツの下に着ない

ネイビージャケットとブラックシャツ。合わせると色のズレがはっきりとわかり、あまり相性が良くないことがわかる。
左がネイビーで右がブラック。
これらの色は相性がそこまで良くない

ブラックスーツもしくはチャコールグレーのスーツであればまだ良いと思いますが、ネイビーのスーツの下には着ないでください。ネイビーとブラックというのは実は相性が良くないです。大部分のネイビースーツに黒の革靴といった様に、コーディネートに対するネイビーの比重が大きい場合は良いのですが、ネイビー半分ブラック半分といったように合わせてしまうと、おしゃれに見せるのは至難の業です。

ジャケットを着ない場合は、潔くデザインが極まった物を選ぶ

一番中途半端に見えるのが、レギュラーカラーの黒シャツをタックアウトして着るパターンです。夏場の演奏会などでこういった格好をしている人を見かけるのですが、カジュアルに着るならいっそデザイナーズブランドの物など、方向性が180度違う様なシャツを着る方が潔くてカッコいいです。

ステージで履く靴は?

最もオーソドックスなのは黒色の革靴です。ステージというシチュエーションもあるので、ストレートチップやプレーントゥの様なフォーマル度の高い革靴がお勧めです。ただ、別にそれでないといけないというわけでもなく、僕は普通にセミブローグを履いたりもしますし、シングルモンクストラップなんかも良さそうです。ローファーはエレガントな物であれば良いですが、そのあたりの判別は少し難しいので、簡単にしたい方は紐履の方がお勧めです。また、茶色の革靴は基本的には避けた方が良いです。革靴におけるエレガントさは色によって大きく変わります。

華やかに見せるための着こなし術

繰り返しになりますが、スーツは控えめの美学が大切です。なので、基本的にはシンプルに着こなした方がエレガントに見えます。ただ、そうはいってもせっかくの晴れ舞台なので、普段とは違う着こなしをしてみたいですよね。そこで、スーツを華やかに見せるための着こなしのテクニックを紹介します。

アイロンをしっかりかける

出鼻をくじかれた様な気がする方もいらっしゃると思いますが、アイロンがけはスーツの着こなしの中で一番大事な要素です。せっかくの大事な晴れ舞台に、洗いざらしでヨレヨレのシャツに、ジャケットの袖やスラックスがくしゃくしゃのシワだらけでは台無しです。別に特別な技術が必要というわけでもありませんが、着用前にはしっかりとアイロンを当てる事を意識してください。

ポケットに物を入れない

これも非常に大切な要素です。特に、表側のポケット、特に腰ポケットにやたらと物を入れていると、シルエットが崩れて台無しになってしまいます。スマホなどを入れたくなる気持ちはわかりますが、なるべく腰のポケットは使わず、もし必要な場合は胸の内ポケットに収納する事をお勧めします。もしフラップがついている場合はポケットの中に入れてしまうとよりエレガントに見えます。

ポケットチーフ

普段のビジネススーツではあまり取り入れない方も多いと思われるポケットチーフですが、スーツを華やかに見せてくれる大事な装飾品です。胸ポケットに少しアクセントを挿すだけで、全体の印象がガラリと変わったりするのが、スーツの面白いところです。誰でも簡単に挿せるのは白無地のチーフとなります。TVフォールドでもいいですが、せっかくなのでパフドスタイルで入れるのをオススメします。もし、より凝った組み合わせに挑戦したい場合は、ネクタイと同系色だけど、ほんの少しだけずれている色の物なんかがお勧めです。ただ、これは簡単そうに見えて奥が深いので、チーフを買う時はどの色味のネクタイに合わせたいのかなどを相談される事をお勧めします。

あまり推奨されない着こなし

さて、そういったあまりお勧めできない着こなしやアイテムもありますので、順を追って説明させていただきます。

半袖シャツ

夏の暑い時期には着る方も多いのではないでしょうか。もちろん普段着としてであれば普通だと思いますが、ステージ衣装として考えると「どうかな?」といったところです。現代において、演奏会が開催される様なサロンやホールでは空調設備がしっかりしている場合が多いです。その為、舞台ではなるべく半袖シャツ一枚というのは避けて、最低でも長袖のシャツを着る方がお勧めです。

ジャケットを着ないシャツとネクタイの組み合わせ

ジャケットを着ないでネクタイを締めるというのは、違和感が非常に生まれやすいコーディネートになります。もし「ジャケットは着たくないけど、ネクタイは締めたい!」という場合は、シャツの上にベストを着る様にしてください。そうすることによって、エレガントさも保てますし、快適に過ごす事ができます。

派手なバックルや、靴と違う色のベルト

黒のレザーベルトの比較。

理想論を言うとすれば、ベルトレスでサスペンダーで吊るタイプのスラックスが好ましいのですが、そうはいってもベルトループ付きの物が世の中の大半を占めていると思います。そこで、大事なのがベルトです。ベルトは必ず靴の色と同じ色、つまり黒色を選んでください。そこがズレると全てがおかしく見えてしまうほど、大事なポイントです。また、バックルもなるべくシンプルで、ベルトそのものも細身のものがエレガントに見えるのでお勧めです。例えば、写真のベルトの中では一番上のものがシンプルで上品だと言えます。

短い靴下

ロングソックスとロングポーズの比較。
左が普通のロングソックスで、右がロングポーズ長さがこんなにも違う!

これも必ず避けた方が良いです。よく考えてみれば、楽器を演奏する時って座って弾く場合も多いですよね。ジャストサイズのスラックスというのは、座ると思ったよりも上に持ち上がるので、靴下が短いと脛が丸見えでみっともないです。ロングホーズという、ふくらはぎの上あたりまで覆う様な長ーい靴下を履く事をお勧めします。

燕尾服とタキシードについて

ステージ衣装としても着用される機会のある燕尾服とタキシードに関しては、何を着ればいいかというルールが厳格に決まっているので、間違った着こなしをする方というのは少ないかと思います。ですが、多くの人が見落としがちなのが靴です。かなりの確率で普通の紐履を合わせていたり、ひどい場合はローファーを合わせている人も見かけます。

リーガル製のオペラパンプス。タキシードに合わせる靴として最もフォーマル。
オベラパンプス

タキシードに合わせられる靴というのはいくつか説があるのですが、その多くがディテールに左右されるという上級者的なアイデアばかりです。なので、基本のキとしては、ストレートチップのパテントレザー(エナメル)の紐靴か、オペラパンプスとなります。個人的にはオペラパンプスはなんと言っても華やかですし、こういった装いの際にしか履くことがないレアな靴なので、特別感満載でおすすめです。

ステージ衣装のためにスーツを買うなら?

さて、長々と着こなしのあれこれに関して蘊蓄を垂れてきましたが、もし僕が今「ステージ衣装としてのスーツ」を買うとしたらどのようなものを選ぶかということについてお話ししていきたいと思います。

サイズ感についての大前提

まず、ステージ衣装かどうか以前に、スーツを買う場合はサイズ選びが大事です。体型は千差万別なので、完全にフィットするものというのはなかなか難しいと思いますが、なるべく体にフィットしたものを選ぶ必要があります。そして、ステージ衣装という事を考えた場合、少しだけ気をつけなければいけないのが、ピアノや弦楽器など、腕をグイングイン使うタイプの楽器を弾く人達です。試着する際に、無理なく体が動かせるかというのは確認しておいた方が良いです。「喜びの島の最後の一音が届かなかった」なんていう事故は避けなければなりません。

もし、既製品を買う際にサイズがバッチリ決まらない場合は、お直しするという手段も考慮する必要があります。例えば、袖丈やパンツの裾は必ず直すことをお勧めしますし、ウエストや腿まわりなどは少し出したり詰めたりということもできます。自分で適当にサイズを決めるのではなく、その辺りがわかっている熟練のスタッフの方と相談しながら決めるのが一番です。

ただ、そうはいってもお直しには限界があるというのも事実です。特に、楽器を弾く場合は体を動かすので、その辺りは通常よりもシビアに考える必要があります。ただ、型紙から作ってもらう様なフルオーダーはびっくりするくらい金額が高かったりもします。予算に都合があるけど、既製品がどうしても合わないという方の場合は、パターンオーダーなんかだと手が出しやすいと思います。

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生地の選び方

既製品でもパターンオーダーでも、生地選びは大事です。前提として色味は好みになります。ですが、特にステージ衣装であるということを考えた場合、無地がおすすめということはもちろんの事、実際に光に当たった時にどんな光沢が出るかというのは非常に重要です。一見カッコよく見えても、光に当たるとやたら安っぽくテカテカする生地なんかも残念ながらあります。購入する際は必ず、強い光の下で生地を見られないかどうかを、店員に尋ねてみてください。もしそれを許してくれない場合、そのスーツ屋はモグリです。

また、やたらと番手の細いしなやかな生地は選ばない方が良いです。ステージで演奏するというのは実質的には激しい運動でもあるので、頻繁に動くのはもちろん、ただ座っているより一段と汗もかきますよね。そういった繊細な生地は綺麗なんですがすぐにダメになってしまうので、なるべく頑丈な物を中心に選ぶ事をお勧めします。

ディテール

どういったデザインのスーツを選ぶかというのは個人の趣味によると思いますが、いくつか可能であればお勧めしたいものがあります。まず、ステージ衣装という事を考慮する場合「スリーピース」にする事をお勧めします。そうすることによって、例えば先ほどお話しした様に、ジャケットなしでベストとスラックスのみを使用することができます。これが思いの外便利ですので、もし可能であればベストを持っておく事をお勧めします。また、もしパターンオーダーをする場合、「ベルトレスのサイドアジャスター付」といった仕様もお勧めです。ベルトがなくてもフィットする事で、着心地が幾分良くなりますし、なにより大事な本番でベルトを忘れる可能性がなくなるという、しょうもない理由もあります。裾に関してはシンプルにシングルにする方が無難だとは思います。ダブルでも問題ない場合の方が多いと思いますが、普段使いせずステージで着るだけなのであればシングルの方がすっきり見えます。

スラックスの裾。シングルとダブルの違い。
左がシングルで右がダブル

まとめ

いかがでしたでしょうか。コンサートにおいて一番大事なのはもちろん演奏そのものですが、身だしなみを整えル事で、気持ちも引き締まります。せっかくの晴れ舞台をさらに華やかに出来ることを祈っています。

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