本格的な冬の寒さを乗り切るために最も重要な衣服の一つであるコート。クラシックスタイル愛好家の皆様はチェスターフィールドコートやベルト付きのバルマカーンコートなどは既にお持ちの方も多いかと思いますが、本来の洋服のルーツを辿っていくと、シティでエレガントに着用する為の物であったり、狩猟などの野外活動の際に用いられる物など世の中にはいろんな種類のコートがあります。そんな中には、歴史的に重要な立ち位置でありながらも、まだまだ注目されていないコートもあります。今回お話しする”ローデンコート”もその一つで、日本ではまだまだ着ている方が少なく、ほんの少しだけ通好みなコートと言っても良いかと思います。そんなローデンコートを、この記事では実物を交えながら紹介していきたいと思います。
ローデンコートとは

ローデンコートとは、オーストリアの西部からイタリアの北部にかけて広がる”チロル地方”と言う場所で、貴族向けの狩猟用コートとして誕生しました。最も特徴的なのが”ローデンクロス”と呼ばれる圧縮されたウールやアルパカによって織られた生地を用いて仕立てられていることにあり、防水性や防寒性に非常に優れていることです。その独特な深緑色は”ローデングリーン”などと呼ばれることもあり、クラシックな洋服の中でもあまり類を見ない独特な立ち位置を築いています。
ローデンコートの特徴
ハンティングの際に着用される衣服としてディテールもそれに合わせてかなり機能的になっています。まずなんといっても袖付が特徴的で、銃を構える際に腕を動かしやすいように工夫が施されています。また、脇下があえて縫われていないと言うことで、可能性はもちろん通気性も良くなっています。また、背中には肩甲骨下部あたりから裾にかけて大きなインバーテッドプリーツがついており、運動機能を最大限に高めています。



また、特徴的なのが腰ポケットの後ろ側の脇の縫い目にも一部空いている部分があり、内側に着ているジャケットのポケットなどにも簡単にアクセスができることや、手袋をしていてもボタンの開閉を容易にするために、革でできたくるみボタンを採用しているのも特徴です。


ローデンコートの利点
ローデンコートの利点はなんと言ってもその耐候性にあります。非常に暖かく、少々水に濡れても全く問題がなく、風が吹き荒ぶ日でもそれらを防いでくれます。チロル地方は山岳地帯でもある事から、本来の目的を考えるとやや過酷な環境で着用される事を想定されているため、非常に強靭なコートとなっています。その為、10年20年ガシガシ着用したとしても他のコートに比べるとダメージを感じることが少ないです。
ローデンコートの欠点
欠点という欠点もないのですが、強いて言えば重たいという事に尽きます。もちろんクラシックスタイル愛好家の皆様の中には生地は重ければ重いほどいいといった方もいらっしゃると思いますし、かく云う僕もそんな人間の1人ではありますが、実際カシミヤのコートなどに比べると重さは感じます。また、その耐候性故に日本で電車に乗ったりビルなどの屋内を歩いている時にはややオーバースペックになってしまう事もあります。その為いつでもどこにでも着ていけるというよりは、すこし着用シーンを想像する必要があるかもしれません。
イタリアにおけるローデンコートの立ち位置
元々貴族文化であったローデンコートですが、一般の人にも街着としてすっかり知られており、イタリアの中でも特に北部地域ではローデンコートは定番の一着となっております。やはり土着の文化である事から親しみがある事と、先ほど述べたように非常に頑丈なため親から子に受け継がれていたり、古着市場でも安価に状態の良いものが見つけられる事もあったりと、お年寄りから若者まで広く愛されています。僕のような日本人がローデンコートを着てピザなんかを食べに行くと、それだけで店の方が興味を持って話しかけてくる事もあったりと、誰もが知っている定番とも言えるでしょう。
同じクラシックと言っても、国ごとに微妙に定番とされるアイテムは変わってきますので、ローデンコートはもちろんオーストリアが本流でありますが、ある意味イタリアらしいコートでもあると表現出来ます。
代表的なブランド

先ほども述べた通りローデンコートはチロル地方の伝統的な織物からなるコートなので、ブランドもオーストリアのものが多いです。
僕が所有しているのはSteinbockというブランドの物で、イタリアでも最も良く見かける定番ブランドの物になります。他にもSchneidersやSALKOなどといったオーストリア発祥のブランドの物が広く知られています。少し変わり種ですがBurberryなどのローデンコートも古着市場では時々見かけます。何れにせよ高品質であることは間違い無く、お好みで選ぶことができます。
ローデンコートは一生物と呼ぶべき?
結論から言うと間違い無く一生物と言えます。極端な話をすれば、現代においてローデンコートを何着も買い直さなければならないほど着倒すのは困難とも言えるでしょう。僕が所有する衣服の中でも最も頑丈な一着といっても過言ではありませんし、何年もかけて着ていくうちにようやく硬さが取れて小慣れてくるようなコートです。だからこそしっかりとした作りのものを選ぶことは大切です。上記で挙げたブランド以外でも高品質なローデンコートを作っているメーカーはありますし、いっそお金と時間に余裕があれば馴染みのテーラーで仕立ててしまうと言うのも良いです。もちろん古着でも状態の良いものが沢山あります。
ラグジュアリーとは少し方向性が違い、派手さは全くないコートなのでもしかしたら今後永遠に流行らないかもしれません。ですが、流行に左右されるのでは無く真に永く愛用できる一着をお求めの場合、ローデンコートは最適解の一つとも言えるでしょう。実際に手持ちのコートの中でも、僕にとって特別な一着である事は間違いありませんし、今後もそれは変わらないと信じています。そんな経験から、もしクラシックな装いがお好きな場合は、手に取って必ず間違いのないコートだと断言できます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。もし少しでもローデンコートに興味を持っていただけると幸いです。他にもたくさんの記事を書いておりますので、もしよろしければお読みいただけますと嬉しいです。

