歴史の集積する街 シラクーサ


ある晴れた夏の日の朝、
馴染みのBarを出た私は、
海沿いの爽やかな風を頼りに歩き始めた。

燦々と輝く日ざしを浴びながら、
いつものように橋を渡る。
その向かう先は紛れもなく、
人類の歴史の集積地である。

古代の神殿跡を抜けて細い路地に入ると、
隙間から差し込む光が、
記憶の深さを私に刻みつける。

アルキメデスもかつてそうしたように、
私は思考の世界に深く没頭する。
"シラクーサ"のオルティージャ島へ続く橋

最も美しい街 シラクーサ

シラクーサはイタリア、シチリア島の南東部に位置する都市です。古代ギリシャ時代には帝国の支配下にあったことから、その時代の建造物や文化が数多く残っています。そのことからパンターリカの岩壁墓地遺跡とともに世界遺産としても登録されています。特にオルティージャ島という歴史地区では数多くの遺跡が残されており、非常に魅力的なスポットとなっています。

まず、シチリア本土から島に入って少し進んだところにアポロ神殿跡があります。紀元前6世紀末ごろに建設されたこの神殿は、シラクーサのギリシャ建築の遺跡群のなかでも特に重要なものとなっています。時の支配勢力によって、キリスト教の教会として用いられたり、はたまたイスラム教のモスクとして機能したりと、非常に興味深い歴史を持っています。

"シラクーサ"のアポロ神殿跡
Tempio di Apollo

僕がシラクーサを訪れたのは夏真っ盛りの時期でした。朝早くにたどり着いたので、島内を見学しながら朝食を取ることにします。シチリアはグラニータという有名な氷菓子が生まれた地でもあります。かき氷よりも少しだけしゃりしゃりした食感です。これをブリオッシュと一緒に食べるのが定番となっています。シチリア島はどこへ行っても美味しい食べ物があるのですが、このグラニータとブリオッシュも格別です。

"シラクーサ"にて、シチリア名物のグラニータとブリオッシュ。
ブリオッシュとグラニータ シチリアの名物

さて、小腹を満たしたところでいよいよ観光に向かいます。イタリアの街を訪れる際にに欠かせない建物といえば、やはりなんといっても大聖堂です。シラクーサの大聖堂ももちろんオルティージャ島にあります。

"シラクーサ"の大聖堂
Duomo

シラクーサの大聖堂はかつてギリシャ神話のアテナを祭る神殿だったものがキリスト教の教会に改築されたという歴史があります。そのため、内部にはギリシャ建築の名残である柱などが残されており、非常に興味深いものとなっています。他にも大聖堂と先ほどのアポロ神殿跡の中間あたりにあるディアナの噴水など、とにかくギリシャ神話との関連が非常に強いです

"シラクーサ" ディアナの噴水
Fontana di Diana

ところで、シラクーサが古代ギリシャの影響を色濃く残していることをお話ししてきましたが、実は古代ギリシャの有名な数学者であるアルキメデスが生まれ、そして亡くなった土地でもあります。先ほどのディアナの噴水がある広場はアルキメデス広場といいます。ちなみにこれとは関係ないのですが、シラクーサはかの有名な太宰治の「走れメロス」の舞台となった都市でもあります。

"シラクーサ"のとある小道。アルキメデスの名を冠したレストランがある。
ふと小道を覗くとアルキメデスの名が

オルティージャ島はその昔要塞として機能していたように非常にユニークな地形なのですが、ところどころで海水浴を楽しむこともできます。

"シラクーサ"の海岸の様子。
とある海岸 海水浴を楽しむ人々

そして島の南端に辿り着くと、そこに待ち構えているのは13世紀に皇帝フリードリヒ二世によって建設されたマニアーチェ城です。当初要塞として建築されたこの都市は、その後王族の居住地となったり、監獄になったりと、さまざまな用途で使用されていました。

"シラクーサ"のマニアーチェ城
Castello Maniace

シラクーサは古代ギリシャ時代より様々な権力者が支配した影響により、異なる文化が入り混じって独特の世界観を持っています。一度だけではなく何度も訪れたくなる素晴らしい街ですので、ぜひイタリアを訪れる際には滞在先の候補として一考してみてください。


"シラクーサ"のとある小道。
ある小道
我を忘れ、思考に耽っているうちに、島の果てにたどり着いていた。
マニアーチェ城のほとりで偉人たちに思いを馳せ、
そして波のさざめきに耳を澄ませる。

何世紀にもわたり、人々の営みを抱き続けた大いなる海よ。
恒久の時を超えて、私はここへ導びかれた。
そして今、理解する。
私もこの、永遠に続く歴史という波の一部として、
確かに刻まれていくのだと。

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