北から南にいたるまで、イタリアには山のような種類の郷土料理を中心としたグルメがありますが、やっぱりなんと言っても欠かせないのはピッツァですよね。とはいっても日本ではドミノピザのような、所謂アメリカ的なピザの方が、どちらかというと口にする機会が多いのではないでしょうか?もちろん、そういった好きな物全部乗せのコッテリしたアメリカンなピザも悪くはないですが、本場ナポリで生まれた、世界で最も有名なピッツァであるマルゲリータなんかは至ってシンプルです。小麦粉、水、塩、イーストを混ぜ合わせた生地にトマトソースとモッツァレラチーズにバジルの葉。具材の品質に徹底的に拘り、日毎の温度や湿度に応じて全ての要素のバランスをとり、ただ最高に美味しいピッツァを焼く。それはまさに職人技と讃えられる物です。

ただ、昔知り合いに同じようなことをボヤいて「贅沢を言うんじゃないよ!」と言われたのですが、たった数年の生活でさえ舌がすっかり肥えてしまったのか、中々コレというピッツァに出会う言は難しいです。イタリアに来た頃は何を食べても美味しく感じたのですが、本当に美味いピッツァというのは違う次元にあります。これは全ての料理に通じる事かもしれませんね。
イタリアのピッツァについてのあれこれ

さて、そんなイタリアのピッツァですが、日本で語られている情報は未だ少し錯綜している事もあると感じます。なので、現地で生活していく中で気付いた事や聞いた事などをいくつかまとめてみたいと思います。
ピッツェリアって?レストランとの違いは?

イタリアではと~riaや~eria文字が語尾にある名前のお店をよく見かけます。これは専門店を表すときによく使われる接尾語のような物で、たとえばPizza(ピザ)とeriaで”Pizzeria”やSarto/a(仕立て職人 男性はo, 女性はaを語尾に付ける) とriaで”Sartoria(仕立て屋)といったら様子です。
そのため、基本的にピッツェリアでは食事のメニューはピッツァしか提供していません。逆にイタリア語でレストランの意味を持つ”Ristorante”という名前がついたお店やトラットリア”Trattoria”というもう少しカジュアルな食堂といった雰囲気のお店でピッツァを提供している事はあります。
その為、もし旅行などで訪れる際に「今日はピッツァを食べたい!」という気分の時は断然ピッツェリアをお勧めします。
フォークとナイフで食べるって本当?耳は残すの?

ピッツァの食べ方に関してはイタリアでも色々と議論があります。まず大前提としてピッツェリアでは一人一枚好きな物を頼むのが基本です。食べ物などに保守的なタイプのイタリア人は絶対にシェアしたりしないのですが、若者を中心に、近年では少しずつ味見のために分けたりするのは普通になってきています。
基本的にピッツァが運ばれてくる際はカットされない状態で出てきますが、頼めば4等分ぐらいにはカットしてくれます。ただ、かなり大雑把なので、いずれにせよナイフとフォークで自分の好みの大きさに切り分ける必要があります。とは言え、必ずしもフォークで食べなければならないという訳でもなく、切り分けた後は普通に手でつまんで食べるという人も沢山います。
一つだけ個人的な意見ですが、耳を残す事は個人的にはあまりお勧めしません。そもそも、ピッツェリア側は耳も食べられる前提でもちろん焼いています。耳を食べないのというのは、ピッツァを食べようしながらカロリーを気にしているという、支離滅裂な消費者側の都合でしかありません。もちろんそういった方もイタリアでもいますし、誰かに何かを言われる訳でもないのですが、個人的には全て平らげることをおすすめいたします。美味しいピッツァは耳までふっくらもちもちしていて、とても美味しいですよ。
ピッツァは夜にしか食べない?

大都市や観光地を訪れると、観光客向けに昼間でもピッツァを提供している店が沢山ありますが、それでもイタリア人にとってのピッツァは夜ご飯にカジュアルな雰囲気で食べる物という認識があります。別に昼に食べることが絶対にいけないというわけではないですが、例えば初めて訪れる地などで美味しいピッツァを探したい場合、昼にやっている様なところは個人的にはあまり選びません。
お酒はワイン?それともビール?

ピッツェリアでは基本ワインもビールも提供していることがほとんどですが、体感ではビールを頼んでいる人の方が多いです。イタリアビールといえばMorettiが有名ですが、ドイツやベルギー産のビールなんかも豊富で、ピッツァにとても相性がいいです。
ピッツァを通して分かち合う時間

そのようなことから、ピッツェリアで食べるにしても持ち帰るにしても、人と食べる機会の方が多いピッツァ。それは必然的に、食事の時間を誰かと分かち合うという事です。ピッツェリアでテーブルを囲むにしても、持ち帰って家の食卓を囲むにしても、そこには暖かいピッツァと絶え間のない会話、そして笑顔があふれています。ときにはシェアをして感想を共有したり、季節の食材が使われたピッツァを楽しんだり、美味しいピッツァはただお腹を満たすための物ではなく、職人技を通して生み出される、文化と時間を楽しむ為の一皿なのです。これはピッツァに限らず、どんな食文化にも共通していることだと思います。現代では食事すら、時間を惜しんで簡単に済まされることが多くなってしまっていると思います。ピッツァを食べる際はもちろんですが、如何なる時でも是非、皆様の身近な人との食事の際は時間を惜しまず、大切にしてみてください。その笑顔はきっと、皆様の心を温かくしてくれるでしょう。


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