紺ブレの選び方|最初の一着は、どんなものがいい?

皆様こんにちは。紺ブレは一着あると便利というのは、洋服のセオリーとして鉄板ですが、僕のクローゼットにはその便利な服が八着あります。

一着で済むはずのものが、なぜ八着になるのか。興味のない方からすれば、どれも同じ紺色のジャケットに見えると思います。正直それは全く否定できません。

ただ、実際に着てみると違うんですよね。生地の手触りも、肩の形も、中に合わせたくなる服も違う。なんなら色も微妙に違う。そうやって少しずつ増えてきたのですが、今回並べてみると、意外と出番が減っていた一着がありました。比較的軽くて、雰囲気も中間的なベルベストです。

そして、一着だけ選ぶなら何かと聞かれても、僕はこのベルベストを挙げると思います。出番が減った服を薦めるのも、少し変な話ですよね。

そのベルベストは、梳毛の生地に少し軽めの仕立て、シングル、金ボタン、サイドベンツという一着です。今回は八着の使い分けを振り返りながら、出番が減ったのに、一着だけならなぜこれを選ぶのか、という話をしてみたいと思います。

八着あっても、季節で分かれているわけではない

手持ちの8着のブレザー

まずは、今回取り上げる八着です。ブランド全体の特徴ではなく、僕が持っている個体についてのメモになります。

手持ちの一着形とボタン生地・雰囲気の違い
Burberryシングル/金色やや秋冬寄り。しっかりした形が出る
Belvestシングル/不揃いの金ボタンに交換比較的軽めで、中間的な雰囲気
Brioniシングル/金色春夏向け。表面がツルッとした生地
Abla fashion for menダブル/緑地に金縁・ロゴ柄少し重めで、構築的な雰囲気
TINCATIシングル/金色春夏向けのホップサック
G.VIGLIANTIシングル/金色冬のフランネル。素材の混率は不明
Lanvinシングル/黒地に金縁カシミヤ100%のフランネル。少しモードっぽい。
Brooks Brothers Country Clubダブル/金色僕にとって、いかにも王道という顔つき

冬用、夏用と揃えていたら八着になった、ということなら分かりやすいのですが、僕の感覚では半分は季節をまたいで着られます。ベルベスト、アブラ、バーバリー、ブルックスの四着です。

もちろん、真夏の屋外まで快適という意味ではありません。バーバリーの生地などは少し秋冬寄りです。それでも、着られる時期だけでは使い分けを説明しきれません。

違いが出るのは、着たときにどんな形が出るかと、その日に何を合わせたいかでした。

個人的な紺ブレの好み

左がブルックスブラザーズカントリークラブのブレザー 真ん中がバーバリーのブレザー 右がAbla fashion for menのブレザー

アブラとブルックスのダブル、それからバーバリーのシングル。この三着は構築的で、僕の中ではしっかりした顔つきの組です。こういう雰囲気、結構好きなんですよね。

構築的というと、硬くて動きにくい服を想像するかもしれません。ただ、バーバリーは着ると作りのしっかりした感じがありつつ、動きにくさは感じませんでした。

面白いのは、このバーバリーがパッチポケットだというところです。細部だけ見ればカジュアルな要素があるのに、全体の雰囲気はしっかりしている。ポケットの形一つで、どういう服かが決まるわけでもないんですよね。

ダブルの二着も、それぞれ違います。ブルックスのカントリークラブは、僕にとっていかにも王道のダブルブレザーという顔つき。アブラは緑地に金縁のロゴ入りボタンで、また違う個性があります。どちらも出番のある服です。

一方、ベルベストの紺ブレはもう少し軽めで、雰囲気も中間的です。この一着だけを見れば、使いやすそうに思えます。ところが、クローゼットには他の選択肢も並んでいるわけです。

一番出番が減ったのは、無難なベルベスト

ベルベストのブレザー
ベルベストのブレザー

きちんと着たいときには、僕の好きなタイプであるアブラやバーバリー、ブルックスがある。もっと軽快なジャケットを着たいときには、イザイアとベルベストの比較記事で紹介したようなアンコンジャケットに手が伸びます。

そうすると、その間にいるベルベストの紺ブレを選ぶ機会が減ってしまいました。

ベルベストの出来が悪くなったわけではありません。ただ、もう少ししっかりした形が欲しい日にも、もっと軽く着たい日にも、他に着たい服があるんですよね。

気に入って買った服でも、後から何を買ったかによって出番が変わる。 洋服を買うときはその一着ばかり見てしまいますが、家に帰れば、既に持っている服と並ぶことになります。

ブランドやジャケットそのものの作りの評価と、自分が実際に着たくなるかが揃わない話は、ジャケット・スーツのブランド比較でも書きました。今回はそれが、同じ種類の服の中でも起きています。

ただし、これは八着持っている狂人の話です

ここから「無難な服は選ばないほうがいい」となるかというと、そうでもないと思います。

最初の一着なら、普段のシャツにもニットにも合わせやすい、中間的なものを僕は選びます。実際、八着の中から一着だけ挙げるなら、ベルベストです。僕の手元では出番が減っていても、まだ用途の近い服を持っていなければ、その一着を選ぶ場面はもっとあるはずです。

ただ、最初からダブルの形や特定の生地が好きなら、その気持ちも大切にしてよいでしょう。便利そうだからと選んでも、実際には別の服ばかり着たくなる。それは、まさに僕のクローゼットで起きていることですからね。

僕の手元で出番が多いことと、一着だけで使いやすいことは、必ずしも同じになりません。八着並べて考えたかったのは、このあたりです。

同じ季節の二着でも、生地と形が違う

季節だけでは分かれないと書きましたが、もちろん、冬物と春夏物の違いもあります。

冬のランバンとG.VIGLIANTI

左がランバンのブレザー 右がイタリアのサルトリア G.Vigliantiのブレザー
左がランバン、右がG.Viglianti

冬はランバンとG.VIGLIANTIのフランネルが交互に出てきます。ランバンは肩パッドが強めで、当時のモードらしい雰囲気があります。とはいえ、今着られないほどではないというのが僕の感覚です。

G.VIGLIANTIは、古着で出会ったサルトリアの一着。こちらも肩やラペルに立体感があり、しっかり作られているのに、着ると動きやすいところが気に入っています。素材の混率は分からないのですが、表面の滑らかな手触りも魅力です。

同じ冬の紺色のフランネルでも、袖を通したときの印象は揃いません。G.VIGLIANTIの細かい作りは、こちらのフランネルブレザーの紹介に書いています。

春夏のブリオーニとティンカーティ

左がブリオーニのブレザー 右がTincatiのブレザー
左がブリオーニ 右がTincati

春夏の二着は、生地の表面からして違います。ブリオーニはツルッとしていて、ティンカーティはホップサックです。

以前二着を比較したときには、肩の見え方にも違いがありました。僕が着ると、ブリオーニは肩先が少し持ち上がるような立体的な形に見える一方、ティンカーティはすっと下に落ちるように見えます。

肩やラペル、内側の作りまで見比べた話は、ブリオーニとティンカーティの比較記事で紹介しています。

同じ色で、同じ季節に着る服でも、実際にはこういう違いがある。だから一着増えても仕方がない、という言い訳ができてしまうのです。

金ボタンにも、好みが出ます

今回の八着は、どれもボタンに金色が入っています。だからといって、同じボタンが付いているわけではありません。

ボタン全体が金色のものもあれば、ランバンは黒地に金縁、アブラは緑地に金縁。金色の面積や柄が違います。同じ紺色の服を並べていると、こういう細かいところにも目が行きます。

以前紹介したバーバリーのブレザーでは、ロゴがそのままボタンになっていることが少し気になる、と書きました。金色は好きでも、図柄まで何でも好きというわけではないんですよね。

ベルベストのボタンは、日暮里にて購入

実は、先ほどから出番が減ったと書いているベルベストは、もともと普通のボタンが付いた紺色のジャケットでした。大学生の頃に日暮里でボタンを買って、金ボタンのブレザーらしい見た目に変えています。

日暮里は大学の最寄り駅で、繊維街にはボタンを扱うお店もありました。今付いているのは、一着の中で柄が揃っていない、いわゆるクレイジーボタンです。

一着丸ごと買い替えなくても、ボタンで印象を変えることはできます。手持ちのジャケットで、形や生地は好きだけれどボタンが気になる、という場合には考えてみてもよいかと思います。

替えるなら、元のボタンの大きさと、ボタンホールに無理なく通るかは確認したいところです。前と袖では大きさも違いますし、お直し屋さんに実物を持ち込んで相談する方法もあります。外したボタンを残しておけば、後で戻すこともできます。

一着だけなら、梳毛のシングルがベスト

ここまで書いておいて何ですが、アメリカらしい雰囲気の紺ブレが欲しいなら、僕はブルックスを選ぶと思います。あの王道の顔つきが好きなら、まずそこを見たいです。

一方、イタリアらしいブレザーで一着だけ選ぶなら、僕の答えはもう少し具体的です。

梳毛の生地で、少し軽めの仕立て。シングルで、金ボタン、サイドベンツ。 手持ちでは、ベルベストの一着がその選択になります。

生地は、表面がすっきりしたものを選びたい

梳毛は「そもう」と読みます。繊維を梳いて向きを揃える工程を経た糸を使います。ここで僕が選びたいのは、表面がすっきりした梳毛のウール地です。糸作りに興味のある方は、ウールマークの梳毛工程の解説も参考になります。(外部リンク)

冬はフランネルの起毛した柔らかい感じがいいですし、春夏にはティンカーティのホップサックみたいな、ざっくりした表情も捨てがたい。ただ、一着だけとなると、僕は比較的表面のすっきりした生地を選びます。合わせる服や季節の幅を考えると、結局このくらいが使いやすいんですよね。そこに少し軽めの仕立てが合わさっているのが、僕にはちょうどいいです。

ただ、梳毛ならどれも同じ厚さというわけではありません。名前だけで選ばず、生地の厚さや裏地も含めて、よく着る時期に使えるかは見ておきたいところです。

ブランド名より、組み合わせが大切

ベルベストと書いたものの、同じブランドなら何でもよいという意味ではありません。実際、同じベルベストでも、もっと軽く着たいときにはJacket in the Boxに手が伸びています。

僕が一着目に選びたいのは、先ほどの生地と仕立てに、シングル、金ボタン、サイドベンツが組み合わさったものです。サイドベンツというのは、背中側の裾の左右に切れ込みが入った形のこと。自分がイタリアらしい紺ブレを一着選ぶなら、この形がしっくりきます。

もっとも、僕のベルベストはボタンを不揃いに替えてしまっているので、普通の金ボタンの一着とは少し話が変わります。最初からその部分まで真似していただく必要はありません。ボタン遊びは、好みが出てきてからでも十分ですからね。

最後は、よく着るシャツやニットを合わせて試してみる。古着ならサイズ表記だけでも判断しない。僕のバーバリーは表記では52ですが、普段48を基準にしている僕でも着られる個体でした。一方で袖は長く、購入後に詰めています。

一着で幅広く使いたいのか、既にある服にもう一着足したいのか。 同じ紺ブレを選んでいても、そこで答えが変わります。

今の僕は、気分に合わせてアブラやバーバリー、ブルックスを選べます。それでも、一着から始めるならベルベストのようなものを選ぶと思います。その後また増えるかどうかは、別の話ということで。

干梅 太郎

イタリア在住のピアニスト。クラシック音楽と、イタリアの古い服について書いています。
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