こんにちは。当ブログを継続的に読んでくださっている方はご存知かと思いますが、筆者の僕はイタリアに在住しております。そのため、古着を漁ろうとすれば基本9割イタリア製という前提から始まります。もちろんイタリアの洋服は大好きなのでそれは構わないのですが、逆に他の国で生産された洋服を手にすることは少ないとも言えます。特にジャケットやコートなど、テーラードのアイテムはより偏りが出ます。なので、経験値にどうしても差が出てしまい、最近はイタリア以外で作られた洋服も重点的に探していました。そんな中今回ディグったのは、Brooks BrothersのCountry Clubラインの6つボタンダブルのブレザーです。生地はロロ・ピアーナのSuper 120’s、アメリカ製。ここ最近のディグの中では、かなりの当たりでした。
Brooks Brothers Country Club Blazer

こちらが今回の一着になります。ブルックスブラザーズには時代ごとに複数のラインが存在してきました。最上位として知られるGolden Fleece、主力の1818、少し低価格な346などが有名かと思います。その中でCountry Clubは、ゴルフ場で着用できるような、より上質かつスポーティさも併せ持つラインという位置付けで、2000年代初頭にローンチされました。実はこのブレザーを手にするまでどういったラインなのかあまり知らなかったのですが、Style Forumなどの評価を眺めていると、Golden Fleeceと1818の間あたりに置かれることが多いようです。
このディグ日記でブルックスが登場するのは、第九回のポロカラーシャツ以来ですね。あの時はアメリカ製にインポート生地という90年代のポロカラーシャツ特有の組み合わせでしたが、今回も形は違えどまさにそれです。
アメリカ製のブレザーに、ロロ・ピアーナが乗るということ

ところで、ロロ・ピアーナのSuper 120’sという表記を、アメリカ製のブレザーの裏地に見つけるのは、少し不思議な感じがします。
Super表記は羊毛の繊維の細さを示すもので、数字が大きいほど繊維が細くなります。Super 120’sはおよそ17.5ミクロン。細いほど柔らかく光沢も出ますが、そのぶん打たれ弱くもなるという、素直な等価交換の世界です。
面白いのは、Country Clubのブレザーにロロ・ピアーナの生地とウォーターベリー社のボタンが使われた個体が、海外のフォーラムでも度々話題に上っていることです。つまりこれは偶然の混血ではなく、当時のこのラインの標準的な構成だった可能性が高い。アメリカ製のラインの上のほうを、イタリアの生地とコネチカットのボタンで組み上げていた時期があるわけです。
「カントリークラブ」という名前について

ところで、ラインの名前を口に出すたびに少し引っかかるものがあります。カントリークラブ。
以前アイビースタイルについての記事で長々と書いたことなのですが、この手の服が背負ってきた社会的な背景は、決して無色ではありません。カントリークラブというのは、アメリカにおいて長らく、誰が入れて誰が入れないかを線引きしてきた場所でもあります。その名前が、そのまま紺ブレザーのライン名になっている。
もっとも、だから着ないという話ではありません。あの記事でも書いた通り、ルールとしてではなく歴史的引用として纏う、というのが今の僕の立ち位置です。
イタリアの古着屋の片隅にかかっていて、アメリカで作られたにもかかわらずそもそもの文脈からずいぶん遠くまで流れてきています。それを2026年の今、日本人のピアニストが拾って普段着として着るというのは、我ながらなかなか奇妙な巡り合わせだと思います。
購入時の価格は25€(当時のレートで約4500円)でした。正直これだけ状態が良く、サイズもドンピシャであれば買わない理由がありませんよね。スタイリングの幅を広げてくれると期待しています。
ディグ日記 休載のお知らせ
さて、少し正直な話をさせてください。
2026年春はあまり執筆できていなかったので、今更何を?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、このディグ日記、しばらくお休みをいただこうと思っています。理由は単純で、最近「日記のために買いそうになる」瞬間が出てきたからです。古着屋巡りをしているときに、ふと手に取って”面白い記事になりそうだ”と一瞬でも思った。その順番は本来逆で”良いと思ったから買う”が先にあるべきだと思います。
もちろん洋服について書く場所を持つと、洋服を買う理由が一つ増えてしまう。単純に物について書くことは楽しくもありますが、放っておくと自分の物差しのほうが曲がっていくような気がします。人間は弱い生き物なので、どうしても外的要因に左右されやすく、自分が本当に好きかどうか、それともみんなが好きだから好きなのか、よくわからない時があると思います。なので今少し立ち止まって、手元にあるものと、自分に似合う洋服とは何かについて、一度きちんと見直す時間を取ろうと思います。
その点、最後に来たのがこの一着だったのは、我ながら都合が良すぎるくらいでした。25ユーロで、しかも記事のためという言い訳を一切必要としなかった買い物だったからです。
もちろんこれで終了というわけではなく、またディグの虫が騒ぎ出したら何食わぬ顔で第三十一回を書きます。あるいは新ディグ日記として新たに始める可能性もあります。それまでは、これまでの古着ディグ日記を暇つぶしにでもお読みいただけますと幸いです。






