皆様こんにちは。革靴の美しさは、細ければ細いほど良いというものではありません。丸みのある靴には安心感があり、ボリュームのある靴には装い全体を支える力があります。一方で、余分な量感を削ぎ落とした、華奢な靴にしか生まれない美しさもあります。
今回は、細く流麗ないかにもイタリア靴らしいシルエットを持った一足。“Tanino Crisci”によるダークブラウンスエードのコインローファーを紹介させていただきます。
Tanino Crisci Dark Brown Suede Penny Loafers

Tanino Crisciは1876年、ミラノで乗馬用ブーツの製作から始まった老舗靴メーカーです。当ブログでは、Tanino Crisciによるシングルモンクストラップシューズについても紹介していますが、美しさと品質を徹底して追求した、イタリアを代表する靴ブランドの一つでした。
今回紹介するのは、ダークブラウンのスエードを用いたコインローファーです。残念ながら型名は確認できていません。装飾らしい装飾は甲を横切るサドルだけという、ごく基本的な形になります。
同じコインローファーでは、当ブログでBruno Magliの一足も紹介しています。そちらが気負わず履ける実用的なローファーであるのに対し、このTanino Crisciは、まずシルエットの美しさが目に入る靴です。
細身が生み出す美しさ
この靴を見て最初に感じるのは、やはりその細さです。
全体の線が細く、非常に華奢。英国靴に見られるような量感はほとんどなく、野暮ったさを徹底的に削ぎ落としたような形をしています。当ブログで紹介しているTricker’sの“Chelsea”が、同じローファーでも丸くボリュームのある姿をしているのとは、まさに対照的です。
もちろん、イタリア靴を一括りにして語ることはできません。それでも、日本で“イタリア靴”と聞いた時に想像される、細身で華奢、そして少し色気のある姿を、そのまま形にしたような一足だと思います。
ダークブラウンのスエードも、このシルエットによく合っています。スムースレザーほど輪郭を鋭く見せず、細身の靴に少しだけ柔らかさを加えている。シャープでありながら、冷たい印象にはなっていません。
美しいが、合わせやすくはない

一方、この細さは服装において、必ずしも合わせやすいとは言えません。
今は以前のように流行と言えるほど、洋服のシルエットに強い傾向がないので、細いものから太いものまで探そうと思えば探せる時代かと思います。しかし、こうした華奢な靴にはやはりジャストサイズあるいは細身の洋服と合わせなければ足下だけが細く見えてしまうことがあります。
もちろんジャストサイズで履ければ、その繊細なシルエットを活かせそうです。しかし少しでもサイズに余裕があると、靴の細長さばかりが強調されかねません。ジャケットはもちろん、特に合わせるパンツの太さや裾幅にも気を遣う必要があり、何にでも履ける実用的なローファーというより、全体のバランスを考えた上で選びたい靴です。
ただ、合わせにくさと靴そのものの美しさや品質は別の話です。この靴も細身でありながら単に薄く平たいわけではなく、全体の線が美しくつながっています。シルエットをここまで繊細にまとめながら、安っぽく見せないところに、Tanino Crisciというブランドのクオリティの高さを感じます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。細く華奢で、いかにもイタリア靴らしいTanino Crisciのコインローファー。誰にでも、どのような服にも合わせやすい靴ではありませんが、だからこそ成立する繊細な美しさを持っています。当ブログでは今後も、現在の価値観だけでは測りきれない、過去の名靴を紹介していきますので、お楽しみいただけますと幸いです。






