皆様こんにちは。靴を買う時についついわかっていても、実用度外視で、華やかで美しい方に目が行ってしまいませんか。僕もまさにそうで、靴単体で美しい物に惹かれがちです。ですが実際に靴箱を眺めてみると、出番が一番多いのは決まって、地味で変わり映えのない黒の一足だったりします。今回はそんな、派手さとは無縁でありながら結局一番頼りにしている靴。ボローニャ生まれの”Bruno Magli”によるシボ革のコインローファーを紹介させていただきます。
Bruno Magli Grain Leather Penny Loafers

Bruno Magliは1936年、ボローニャで創業した靴メーカーです。祖父から靴作りを学んだBruno、Marino、Mariaという三兄妹が、自宅の地下室で婦人靴を作り始めたのが始まりでした。Brunoがデザインを、Mariaが甲革の縫製を、Marinoが底付けを担当していたと伝えられています。家族の中で工程が分かれていたという話は、いかにもイタリアの靴作りらしくて好きなエピソードです。
1947年には地下室を出て自前の工場を構え、この頃に紳士靴へと領域を広げます。1967年にボローニャで一号店を開き、1969年にはより大きな工場へ移転。1980年代には世界中に店舗を展開し、イタリアを代表する靴ブランドの一つとなりました。
ただ、2001年に創業家が経営権を手放し、現在はニューヨークに拠点を置くブランド管理会社の傘下にあります。名前は残っていても中身は変わってしまった、という意味では、僕がこのブログでよく取り上げるような”今は亡きブランド”に近い存在かもしれません。

ちなみにボローニャという街は、以前の記事でも書いた通り、A.TestoniやEnzo Bonafèをはじめとする名工房を抱える靴の街でもあります。柔らかい履き心地で知られるボロネーゼ製法にその名が冠されているくらいですから、この街の靴作りには一貫した思想があるように感じます。
コインローファーという靴
コインローファーの原型は、ノルウェーの漁師たちが履いていたモカシン型の履物だと言われています。それを英国の釣り客が持ち帰り、ヨーロッパのリゾートで広まり、やがてアメリカへ渡りました。そして1936年、アメリカのG.H. Bassがこれを自国向けに仕立て直し、”Norwegian”を縮めた”Weejun”という名前で売り出します。これが今日まで続くコインローファーの原型ですね。
甲のストラップに開いた菱形の切れ込みにペニー硬貨を挟むようになったのは1950年代、アイビーリーグの学生たちの間からだとされています。公衆電話用の小銭を入れていたから、という説が有名ですが、当時の通話料金と合わないという指摘もあり、単純に革に対して銅色が映えるからという方が実際に近いのかもしれません。(この靴が背負ってきた文脈については、アイビースタイルについての記事でも別の角度から書いています)
面白いのは、Bass Weejunが生まれた1936年が、Bruno Magli創業の年とちょうど同じだということです。片や大西洋の向こうで学生の靴として広まり、片やボローニャの地下室で婦人靴から始まる。まったく別の場所で走り出した二つの線が、こうして一足の靴の上で交わっています。
シボ革の良いところは、なんといっても気を遣わなくていいことです。表面に凹凸があるぶん、細かい傷や擦れが目立ちません。スムースレザーの黒だと一日で気になってしまうような傷が、この靴だと存在ごと吸収されてしまいます。手入れの手間が減るというのは、それだけでその靴の出番を増やします。
もっとも、以前コンサートの服装について書いた通り、ローファーは本番の足下としては少し判断が難しい靴です。エレガントな作りのものであれば問題はないのですが、迷うくらいなら紐靴の方が安全です。この靴はカジュアルな要素が多いので、あくまで、舞台に上がらない日の相棒という位置づけになります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。変わった靴もそれはそれでいいですが、生活を実際に支えてくれているのはこういう靴です。名前が有名になりすぎた結果、クオリティなど中身が誠実に語られなくなってしまったブランドというのもあるように思います。当ブログでは今後も新旧問わず、僕が個人的に思う色々な名靴を紹介していきますので、お楽しみいただけますと幸いです。



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