イタリア古着ディグ日記 #26 Finamore 1925(フィナモレ) シャンブレー ワンピースカラーシャツ

こんにちは。皆様は「ワンピースカラー」という襟型をご存知でしょうか。襟と台襟の切り替えがなく、一枚の生地から裁たれた襟のことで、イタリアンカラーと呼ばれることもあります。名前だけ聞くと地味な違いに思えますが、これが実物だと驚くほど印象を変えてしまうから面白いところです。

思えばこのディグ日記でも、シャツはこれまで何度か登場してきました。第四回のバルバ第十八回のルイジ ボレッリとナポリが続き、第二十二回のFrayでボローニャの北へ振れて。そして今回、またナポリに戻ってきます。しかも、上に挙げた二つのナポリのカミチェリアよりもさらに古い一軒です。Finamoreのシャンブレーシャツをディグりました。

Finamore 1925 Chambray Shirt

Finamore 1925 Chambray Shirt

こちらが今回ディグった一枚になります。Finamoreの始まりは1925年。カロリーナ・フィナモレという女性が、数人のお針子とともにナポリの旧市街に小さなアトリエを構え、限られた顧客のためにシャツを手縫いで作り始めたところからです。1960年代には息子のアルベルトと妻のステファニアがより大きな工房を立ち上げ、現在は三代目にあたるシモーネ、パオロ、アンドレアの兄弟が続けています。

面白いのが創業年です。ルイジ ボレッリが1957年、バルバが1960年代と言われていますので、ナポリのシャツブランドとしてはFinamoreがかなり早い部類に入ります。このディグ日記、意図せずナポリのシャツ史を新しいほうから逆走してきていたことになりますね(完全に偶然です)。

ワンピースカラーという襟

Finamore 1925 Chambray Shirt ワンピースカラーの襟の様子

一般的なシャツの襟は、襟本体と台襟という二つのパーツを縫い合わせて作られています。ワンピースカラーはその切り替えがなく、見返しに至るまで一枚で仕立てられているのが特徴です。

実際に着てみるとわかりやすいのですが、首元のロールが非常に綺麗に出ます。縫い目という「折れる理由」が存在しないぶん、生地が自分の癖で自然に転がってくれるという理屈なのだと思います。もっともこのシャツは通常のシャツで言う第2ボタンまでがそもそもついていない、かなりカジュアルな仕様になっているので、春夏のカジュアルシャツの中でも少し大胆な顔です。とはいえ、オープンカラーほど寛いだ顔にはならず、かといって普通のシャツのようにきちんとしすぎもしない。この中間の表情が、ワンピースカラーの最大の魅力と言えるでしょう。

シャンブレーという生地

Finamore 1925 Chambray Shirt タグの様子

シャンブレーは、経糸に色糸、緯糸に白い糸を用いた平織りの生地です。同じように青く見えるデニムが綾織りであるのに対し、こちらは平織りなので、生地の表情がすっきりとして軽く見えます。名前はフランス北部の街カンブレーに由来するとされています。

ドレスシャツの生地としてはややカジュアル寄りですが、ワンピースカラーとの相性で言えばこれ以上ないのではないでしょうか。そもそも締めるためではなく、開けるために作られた襟なのですしね。

ちなみに、Finamoreに限らずナポリのシャツは、袖山にギャザーを寄せて手で袖を付ける技法や、芯地を入れない柔らかな襟といった作りで知られています。腕を上げたときに身頃が引っ張られない、というのがその効用です。鍵盤に向かう人間としては、腕まわりの自由が利くかどうかは着心地の好みというより実務の問題なので、この手の作りにはどうしても目がいってしまいます。購入時の価格は15€(当時のレートで約2700円)でした。初めてのFinamoreは少し変化球でしたが、これからの春夏に活躍してくれること間違いなしです。

いかがでしたでしょうか。少しでもお楽しみいただけましたら幸いです。もしよければ前回の古着ディグ日記もぜひチェックしてみてください。

干梅 太郎

イタリア在住のピアニスト。クラシック音楽と、イタリアの古い服について書いています。
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