イタリア古着ディグ日記 #24 Baracuta G9 スイングトップ

こんにちは。ところで皆様は「スイングトップ」という呼び方を普段お使いになりますでしょうか。ご存知の方も多いかと思いますが、これはVANの石津謙介氏がゴルフのスイングから名付けたとされる和製英語で、海外ではまず通じません。イタリアで暮らしていると、この手の丈の短いブルゾンを羽織っている方は本当によく見かけます。

そんな姿を見ているとつい自分も着てみたくなるのが服好きの宿命でありますが、たまたまその原型そのものと言える一着に偶然出会うことができました。それが今回ご紹介するBaracutaのG9です。

Baracuta G9

Baracuta G9 ハリントンジャケット スイングトップ

こちらが今回ディグったG9になります。Baracutaは1937年、JohnとIsaacのミラー兄弟によってマンチェスターで創業したブランドです。雨の多い英国の気候をしのげて、それでいて品のあるゴルフジャケットを作る、というのが出発点でした。「G」はGolfの頭文字で、G4、G9というナンバリングもそこから来ています。

翌1938年には、クラン・フレイザーの当主であるサイモン・フレイザー卿(ラヴァット卿)から許可を得て、フレイザータータンを裏地に採用したと言われています。ジップを開けたときにちらりと覗くあのタータンは、単なる柄選びではなく、由緒あるものを一枚お借りしているわけですね。

Baracuta G9 ハリントンジャケット スイングトップ タータンチェックの裏地

「ハリントン」と呼ばれるまで

G9が「ハリントンジャケット」の名で広まったのは、1960年代のアメリカのドラマ『Peyton Place』がきっかけだとされています。ライアン・オニール演じるロドニー・ハリントンがG9を着続けたことに目をつけたロンドンのIvy Shopのジョン・シモンズが、「The Rodney Harrington Style」として店頭に出したのが始まり、という説が有名です。それが縮まって「ハリントン」。エルヴィス・プレスリーが『King Creole』(1958年)で着用した件も含めて、この一着がどれだけ他人の記憶に焼き付いてきたかがよくわかります。

服そのものは何も変わっていないのに、呼び名だけが国と時代をまたいで増えていくというのは、考えてみると面白い現象です。英国ではハリントン、日本ではスイングトップ、そしてイタリアでは、そもそも特別な名前で呼ばれている気配があまりありません。

国を超えて継承されるもの

購入してから調べたんですが、現在のBaracutaが、実はイタリア資本のブランドになっています。

2012年、ボローニャに本拠を置くWP Lavori in Corsoがこの英国ブランドを手中に収めました。同社は1982年にボローニャで創業し、Woolrichの欧州展開を手掛けたことでも知られる会社です。アーカイヴもボローニャ市内にあり、数万点規模の収蔵品を抱えているとか。つまり、僕が今暮らしている街の会社が、マンチェスター生まれのこの一着の面倒を見ているということになります。

そう考えると、イタリアの古着屋でG9に出会うのは、それほど不思議なことでもないのかもしれません。

Baracuta G9 ハリントンジャケット スイングトップ アンブレラヨークの様子

鉄板ですが、個人的に気に入っているのは背中のアンブレラヨークです。もともとは雨を流すためのディテールなのだと思いますが、結果として肩まわりに余裕が生まれていて、腕を大きく動かしても身頃が突っ張りません。ゴルフのスイングのために生まれた服なので当然といえば当然なのですが、機能性が美しく見えることってよくありますよね。

Baracuta G9 ハリントンジャケット スイングトップ
AERO ZIPがついています

購入時の価格は20€(当時のレートで約3500円)でした。いかがでしたでしょうか。少しでもお楽しみいただけましたら幸いです。もしよければ前回の古着ディグ日記もぜひチェックしてみてください。

干梅太郎

干梅太郎

イタリア在住のピアニスト。クラシック音楽と、イタリアの古い服について書いています。
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