皆様は、レンズとレンズの間に丸い輪がついたサングラスをご覧になったことはありますか?レイバンのティアドロップなのですが、顔の真ん中にわざわざ輪がついている、少し変わった形です。あれはSHOOTERというモデルで、実はこの輪にもちゃんと用途がありました。煙草を挿しておくためのものです。眼鏡にそんな物が必要なのかと思いますが、今回はその辺りの話も含めて、ボシュロム期の一本をご紹介したいと思います。
以前、Photosunのレンズが入ったボシュロム製のアビエーターについて書きましたが、今回も同じくBausch & Lombの時代のRay-Banです。前回はレンズの仕組みが面白い一本でしたが、こちらはまずフレームの形が気になります。上の太いバーに加えて真ん中に輪までついているので、似たようなティアドロップでも、随分と賑やかに見えます。
Bausch & Lomb Ray-Ban Shooter

SHOOTERが登場したのは1938年です。Ray-Banの説明によると、アビエーターから派生して、パイロットからハンターへと用途を広げたモデルなのだそうです。名前もそのまま「射手」ですから、元々はかなり具体的な使い道を想定したサングラスだったわけです。
銃を構える時には両手が塞がります。そこで、煙草を置いておける場所をサングラスの真ん中に作ってしまったのが、この輪ということです。メーカー自身もこれを「cigarette circle」と呼び、手を空けるためのディテールだったと説明しています。言われてみると使い道は分かるのですが、煙草を一度どこかに置くより、眼鏡に挿しておく方を選んだというのがなかなか面白いです。顔のすぐ前に煙草がある状態で、狙いを定めるのに邪魔ではなかったのでしょうか。
ただ、街中でサングラスとして掛ける分には、この穴を使う場面はまずなさそうです。だからといって輪をなくしてしまったら、見た目もかなり変わってしまいますよね。普通のアビエーターに比べると、わざわざ何かを付け足したように見える部分ですが、SHOOTERにとってはここが特徴になっています。現行のRB3138にも輪は残っていて、元々の用途を知らなくても、この形のサングラスとして選ぶことができます。
こういう、本来の用途から少し離れたところで形が気に入られるというのは、洋服でもよくあることだと思います。以前不便な鞄を使う理由について書いたことがありますが、僕にとっては、その機能を使うかどうかだけで持つ理由が決まるわけではありません。この輪も、使わないから余計な物だと言ってしまえばそれまでなのですが、取った方が格好よくなるかというと、そう単純でもないと思うのです。
少し話が逸れますが、ピアノの左のペダルにも、昔の仕組みが名前に残っている例があります。「una corda」はイタリア語で「一本の弦」という意味です。古いピアノには文字通り一本だけを叩くようにできるものがありましたが、現代のグランドピアノでは、三本の弦を張った音域で、通常は二本を叩くようになります。それでも名前はuna cordaのままです。もちろん、こちらは今も音色を変えるために使うので、機能がなくなったわけではありません。ただ、普段何気なく見ている名前や形に、昔の使い方がそのまま残っているというのは、知ると少し気になる話です。
「10K GF」という刻印

もうひとつ、今回のフレームで触れておきたいのが「10K GF」という表記です。GFはgold filledの略で、日本語では「金張り」と呼ばれます。金の合金の層を、芯になる別の金属に機械的に接合したものです。10Kはその表面の金合金が10金であることを表していて、フレーム全体が10金でできているという意味ではありません。
金メッキとひとまとめにしたくなりますが、電気メッキで金の膜をつけるものとは作り方が違います。見た目の色だけならどちらも金色なのに、こんなに小さな文字で作りの違いが書かれているのは面白いです。ヴィンテージのサングラスを見る時、レンズやフレームの形に目が行きがちですが、こういうところにも違いがあるのですね。
実際に掛けてみると
実際に掛けてみると、掛け心地はかなり良いです。耳に掛かる部分がしっかり引っかかるので、ずれにくいんですよね。上の汗止めのバーもそうですが、こういうところはやはり実用的に作られているなと思います。見た目では真ん中の輪に目が行きますが、サングラスとして使う時には、このずれにくさは大きな利点です。
あとは、金属の色合いにも少し違いを感じます。もう少し重たさもあって、フレームの雰囲気が違うんですよね。どこがどう違うのか、言葉にするのは難しいのですが、掛け心地とはまた別に気になるところです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。真ん中の輪の用途も面白いのですが、実際に掛けてみると、ずれにくさや掛け心地の良さも気に入っています。見た目に癖があっても、使う上でこういうところがちゃんとしているのは嬉しいですね。金属の色合いや重たさも含めて、同じレイバンでもまた違った印象の一本です。






